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季節の変わり目とあって、吹き抜ける風がだんだんと冷たくなっていった。
国の中心にそびえ立つ、白い城の一角。
三つある内、端にある塔の上層、その中で一つだけ窓が開いていた。
双眼鏡であれば、人々は戦々恐々とするだろう。
落ちれば命がないであろう高さにある窓から彼は足を投げ出していた。
風を感じつつ、そして見下ろすかのように一望出来る活気づく街並みを眺めていた。
その先には海が広がり、夕暮れになりつつあるというのに船が白い尾を引きながら漂っていた。
彼の背後には書類に埋もれるマホガニーのデスクがある。
重厚感漂うそれは、その威光を示すことは出来なていなかった。
ただ、それは彼が決して無能だからそうだというわけではない。
やるべき事が多すぎるのだ。
なぜなら、それは元来二人ですべき分量なのだ。
それを彼は何年も何年も一人で抱え込んでやっている。
そう、文句一つも言わずに……
彼の近くに立つ副官は、その姿を見続けてきていた。
そして、年々まだ若いはずなのに、彼が老け込んできているのではないかと不安にも駆られていた。
彼はそうやって、街を……いや国を眺めていることが多かった。
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