プロローグ

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 要職に就き、そして慣れないはずの激務に身をさらされるようになって9年……いや、正確には8年だろう。  それまではつらつとし、明るかった彼の印象は変わった。  風格がやっと身についてきたと、言う人々もいるが、彼女は違った。  責任感から変わったのは分かるが、それだけのために、雰囲気ががらりと変わるわけがない。  時より、そうやって執務の合間に休憩と称して外を眺めるのが日課ともなっていた。  そんなときだった。  ノックがして、彼女は一瞬躊躇した。 「どうぞ」  彼が先に返事をした。  重厚感ある扉が開き、灰髪に深い彫りが刻まれた壮年の男性が入ってきた。 「んん? また眺めているのか? デリファス将軍」  ため息交じりの声を背中に受け彼、デリファスはゆっくりと体を回転させて向き直った。 「何の用でしょうか。ラサルド将軍」  落ち着いた雰囲気に短く切りそろえられた黒髪。  端正な顔つきは、どこか人を惹き付ける魅力があった。  そして何よりも、強固な肉体を持っていた。  肩幅は広く、そして大きい。  服の上からも厚みのある立派な胸板が分かる。 「相変わらずの様子でなによりだが……」  ラサルドはずかずかと中へ足を踏み入れ、手前にあるソファに腰を落とした。
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