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それを見て、デリファスもまた窓枠からゆっくりと離れた。
「貴方様が直々にこちらにお見えとは、珍しいですね」
「……ふん」
ラサルドは少々不機嫌そうに鼻を鳴らした。
ただでさえ、彼が来ると言うことは本当に希有なことなのだ。
だからこそ、何かがあるに決まっている。
「最近、不穏分子の活動が活発になっているらしい。これがどういうことなのか、お前は把握しているか?」
「……国家転覆ですか」
「そうだ。もっとも、その不穏分子とて勢力は二つあるのが現状だがな」
「それで、最近活発になっているのは、どちらなんですか」
「決まっている。旧サーガルス国だ」
ギョロリと視線をデリファスへと送った。
それを見留めて、やれやれと彼は深々とため息をついた。
「頭の痛い話ですよ」
「そうかね? だが、この辺りの勢力が続くというのは誰かが手引きしているからだと、私は常々思っているのだ」
「手引きですか、この城に内通者がいると?」
「城かどうかなどわからぬさ。だが、力のある者には違いないだろう。なぁ、旧サーガルス国将軍デリファス」
それを聞き、うんざりというように彼は天を仰いだ。
「そのような愚痴を言うために来たというのですか?」
言いはしないが、顔には暇ですなぁと皮肉たっぷりに笑っている。
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