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赤いおさかな
並んでいた列から解放されるなり、赤毛の少女が、きゃー、と走っていく。
「ちょ、待て浄火! 迷子になる」
『ならないもん。昭人くんがどこにいたってわかるんだからっ』
おさかなー、と水槽に顔をくっつけている。
かわいいけどな……、とそのちいさな背中を守るように後ろに立った。
『ねえ昭人くん、青いおさかなすごいおっきい。きゃー、やだこっち見たー』
振り向いてしがみついてきた。
「怖いなら近くで見るなよ」
はい、と両手を上にのばした。
何の要求なのかはすぐにわかったが、気づかないふりをする。
『抱っこ!』
「あのな……」
『昭人くんのそばなら怖くないもん』
浄火が少女の姿をしてるので、年の離れた兄妹に見えるのだろう。近くにいたカップルの女性が微笑んでくれた。
「……すいません」
妹がほしかった。
かわいくてワガママで奔放で。でも最後には頼ってくれる、甘えてくれる、そんな存在を。
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