誕生日メール

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 学校の昼休み、藤倉昭人は震えたポケットに手を突っ込んだ。  着信を見て、母からのメールだと気づく。  帰りに何か買ってこいとでも言うのだろう、と内容を確認する。  件名には誕生日おめでとう、と書かれていた。 「は?」  自分の誕生日はまだ二ヶ月も先なのに。  向かいにいた友人が異変に気づいて興味深そうに身を乗り出した。 「どした?」 「や、母さんから、だけど」  なんだ、と無気力に言った。 (誠さん、誕生日おめでとう! 今年のケーキは手作りっ。なるべく早く帰ってきてね。プレゼントもちゃんと用意してるから!)  誠というのは、父の名前だ。 「宛先……間違ってます、母」  脱力した。
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