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青いねー、赤いねー、きれいねーと耳のそばで声がしている。
心地いい、音だ。
『ねえ聞いてる?』
「あ? ごめん。内容聞いてなかった」
『昭人くん、どのおさかな好き?』
「……近くにいるヤツかな」
『これ? 茶色いの? 渋い趣味ね』
「それじゃねえよ、赤いやつだ」
『赤いの近くにいないわよ?』
浄火の赤毛をなでた。
「じゃ、おれの見間違い」
『なにそれ……?』
「何もねえよ!」
『そばで怒鳴らないでよっ!』
ぷくりと頬をふくらませた。
降りるー、と暴れる。
「不便なら美刀みたいに大人の姿でいればいいだろ」
ぴた、と動きをとめた。
『だって昭人くん……、大人の女性苦手でしょ?』
自覚はある、確かに。苦手というか、何を話せば失礼にならないのかがわからず黙ってしまうだけだ。
「うるせえわ!」
『かわいいー……昭人くん』
「お前が言うな」
―おわり―
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