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青い魚
並んだ人々の列から解放されるなり、走っていく浄火と昭人を目で追う広希に気づいたのは、美刀だった。
「見た? 美刀。昭人くんたち一目散だよ。元気だねえ」
『広希、青い大きい魚いるぞ』
「そりゃ水族館だからいるよ普通に」
美刀が沈黙した。
どうやら、広希にとって珍しいものではないらしい。
「お前は元気ないね。まだ昨日の車酔い引きずってる?」
『いや……』
広希と魚を見てもつまらない。
本人もつまらなさそうに人混みから離れている。
そんな広希を見捨て、楽しそうな笑顔で浄火を抱っこしている昭人に近づいた。
『……どうも』
「お、美刀。気に入った魚いたか?」
『……あれ』
広希が反応してくれなかった青い魚を指さす。
「ああ、あれデカイよなー。浄火が半泣きで抱っこしろとか言い出してさー」
『泣いてないわよ!』
「で、広希さんは?」
『彼はおモテになるので、見飽きてるらしい』
「……あっそ。もったいねーな。その場その場で感動できないなんてなー」
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