青い魚

3/3
前へ
/35ページ
次へ
「なにやら楽しそうだねー、君たち」 「あ、携帯壊す人」 「……誰?」 「女と何回も見てるから退屈なんだそうで」 「妬いてる?」 「んなわけあるか!」 「じゃ、デートする? 昭人くん」  広希が昭人のあいている腕を組んだ。  ……楽しそうだ。  美刀も昭人のあいている背中に抱きついた。 「おれに群がるな!」 「君たち遠慮しなさいよ。私と昭人くんの初デートなんだから」 「ちげーわ!」 『広希こそ遠慮してよ。あたしが先なんだから!』 「そう! そこはもっと強く言ってやれ」 『……美味い』 「って、おれを喰うなお前は、どさくさ紛れに!」  両手がふさがっているので攻撃が飛んでこない。  薄闇の中で光る水槽よりもっと強く輝いているのに、人間は昭人に気づかない。  にこ、と浄火が笑った。  気づくのは、思惟だけだ。 ―おわり―
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加