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「なにやら楽しそうだねー、君たち」
「あ、携帯壊す人」
「……誰?」
「女と何回も見てるから退屈なんだそうで」
「妬いてる?」
「んなわけあるか!」
「じゃ、デートする? 昭人くん」
広希が昭人のあいている腕を組んだ。
……楽しそうだ。
美刀も昭人のあいている背中に抱きついた。
「おれに群がるな!」
「君たち遠慮しなさいよ。私と昭人くんの初デートなんだから」
「ちげーわ!」
『広希こそ遠慮してよ。あたしが先なんだから!』
「そう! そこはもっと強く言ってやれ」
『……美味い』
「って、おれを喰うなお前は、どさくさ紛れに!」
両手がふさがっているので攻撃が飛んでこない。
薄闇の中で光る水槽よりもっと強く輝いているのに、人間は昭人に気づかない。
にこ、と浄火が笑った。
気づくのは、思惟だけだ。
―おわり―
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