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『すき?』
ちいさく首をかしげる。
「好きですよ」
んー……、と困った顔になる。
『きらい、の?』
「違うよ」
嫌いなわけじゃない。
ただ、今は救えた思惟より、救えなかった命を比べてしまう。
私は結局誰を救えずに、昭人を失いたくない自分を守っただけだった。
「……あ」
ぴよん、と思惟が逃げた。
手を伸ばしたが届かず、いきなり全員が一斉に消えた。
全員……ではなかった。
背中を向けたままちらりと横目に視線を合わせる、美刀がいた。
『せっかく呼んだのに』
「頼んでないよ」
『必要としただろ』
「構わないでくれる?」
『嫌だ』
「やだ、じゃないでしょ」
かすかに、美刀の白い糸が張り巡らされた。
『思惟の世界からお前を隠した』
「は?」
『長くは保たない』
「なに無駄なことやってるの、お前」
『連城広希は行方不明』
「ここにいますよ?」
『……守らせろ』
自尊心を、そう言いたいのだろう。
「いつまで保つ?」
『あと5秒』
ソファから立ち上がった。
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