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「これ、ありがとう。もう少しで風邪をひくところだったよ」
「あ、いえ」
なるべく、顔を見ないように、肩付近を見ていると、絢並くんは腰を屈ませ、こちらに視線を合わせてきた
「僕達、何処かで会ったことない?僕は君を知っている気がするんだ」
ドキリ、とした
質問に答えなくては、そう思うのに思うように言葉が、声が、出てこない、おまけに体が震える
そんな私に疑問を思ったのか、絢並くんがゆっくりとこちらに手を伸ばす
「あのさ、もう、授業始まるぞ」
将也の一言で手が止まった
「あれ、もうそんな時間なんだ?」
手を引っ込め、時計をちらりと見て、視線を私に戻し、またね、とほほ笑み、自分の教室へと、帰っていった。
絢並くんの姿が見えなくなった途端、私の足は体を支える力を無くし崩れ落ちていった
「おい、大丈夫か?!おい!」
崩れ落ちた私を心配した将也の声が遠くにあるように聞こえたが、大丈夫だと伝えた
その間にも震えは止まらなかった
ー彼は、絢並くんは私を思い出そうとしている……?
どちらにせよ、もう関わらない方がお互いの為だろう
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