4人が本棚に入れています
本棚に追加
「……そういやぁさ、アイツって着替え持ってるのかな」
ふと思い出したように、修斗が呟いた。それにフィアは、軽く聞き流すようにして答える。
「流石に持ってるでしょ。勇者と言っても女の子だよ? 異空間を作り出すマジックアイテムも持たないで旅するなんて常識じゃ考えられないし……ま、万が一持ってなくても、私のお下がりでよければ譲るしさ」
「ははっ。フィアのお下がりとか、何百年物のヴィンテージだっつの」
へらへらと笑いつつ言った修斗だが、次の瞬間には部屋の壁にめり込んでいた。
「え? なんて? もう一回言ってみてくれる?」
「……ごめんなさい」
フィアは右拳を力強く握りつつ、逆に清々しいほどの笑顔であった。
そして修斗は、軽はずみな言葉を吐いたことを深く後悔した……が、恐らく3日も経たずに忘れるであろう。
「あー、そうそう。そのアスラのことで良いニュースと悪いニュースがあるから伝えに来たんだったよ。デリカシーのないお子様の所為でうっかり忘れるところだった」
少しいたずらっぽい口調で言うフィアは、壁にめり込んだ修斗の眼前まで近寄った。
最初のコメントを投稿しよう!