4人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてハッと気付き、すぐに冷静さを取り戻した修斗は、顔を右手で押さえて俯いた。
「……すまねぇ。フィアやアイツは悪くねぇってのにな」
「大丈夫、わかってるよ。修斗はまだ、二代目を継いで半年くらいだもんね。不安になるのはしょーがないよ」
フィアはそんな修斗に優しく笑いかけ、ぽんぽんと頭を撫でる……まるで小さな子供に接するように。
「もし、最悪の事態を想定しても……すぐには攻め込まれないはずだよ。色々と準備もあるだろうからね。それまでに対策を考えればいいし……いざとなったら私が護ってあげる。修斗も、みんなも」
修斗の頭に乗せた右手をゆっくり下ろしていき……今度は頬を優しくなぞった。
そして、お互いの額がぶつかる距離で、穏やかな、慈愛に溢れた微笑を、フィアは浮かべる。
「……でも、親父はもういねぇ。フィアだって、俺らを庇いながらじゃ限界があるだろ?」
「そうだね。それでも何とかしなきゃいけない。私が憧れた人は、いつだってそんな状況を、打ち破ってきたんだ」
「なんで……なんで笑ってられるんだよ、お前は。いつだって、どんなときだって、お前はそうだ……全部一人でなんとかしようとしやがる。実際に一人でなんでも出来ちまう。けど……!」
修斗は、悔しさに両の拳を握り締め、体が小刻みに振動する。歯軋りも止まらない……それでも尚、フィアは笑顔を絶やさなかった。
最初のコメントを投稿しよう!