プロローグ 赤と黒

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勇者は長い旅を続けていた。 旧大陸から新大陸へ海を渡り、あらゆる手段を用いて情報を収集し、たった一人でここまで辿り着いた。 国から命令されたわけでもなく、平和を取り戻そうという大義の元でもなく、ただ純粋に家のため。 勇者としての誇りを護るために旅立った。そしてその長きに渡る旅は終わりに近付こうとしていた。 「これが……魔王の居城」 勇者は呟く。その城の巨大さときたら、まさに壮観だ。 周囲を巨大な壁に囲まれ、門も頑丈なセキュリティーに管理されている。 高さはビルの十階ほどだろうか……それでも巨大に見えるのは、広さを重視しているからなのか。壁を一周すると十数キロ以上あるのではないかと思わせる。 「……これで最後だ。行こう」 意を決して、彼女は強行突破を図る。 彼女のカラーリングとは正反対の、蒼白い剣を構え、罠があるのを承知で壁を飛び越えた。
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