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彼女の想像通り、すぐさま城のセキュリティーが作動し、複数の砲門が勇者を狙う。
しかし彼女は素早く軽やかな身のこなしで砲弾の雨をかいくぐり、時に剣で真っ二つに斬り裂いて全て無傷で乗り切る。
そんな中、突如警告音と砲撃音が鳴り止んだ。
代わりに目の前に現れたのは、彼女と同世代と思しき黒髪青眼の少年だった。服装は至って簡素で、言うなればただの部屋着であった。
「だっ……誰だお前!? なんでこんなところに……!?」
「私は勇者……魔王を伐つ者。君こそこんな所にいたら危ないよ。それとも魔王の仲間かなにか?」
侵入者を目の前に狼狽える少年と裏腹に、勇者である彼女の佇まいは堂々たるものだった。ここまで百戦錬磨、輝かしい戦績に裏付けされた自信が垣間見える。
「い、今時勇者って……大体ここには魔王なんていねーよ! あれは親父が勝手気ままにそう名乗ってただけだ……」
「じゃあ君は魔王の息子? 二代目だったんだね」
「そう言えばそうなるけど、違うんだって! 俺は一度も魔王なんて名乗ったことないし、親父のそれだってただの自称だし! 頼むからその物騒なもの仕舞え!」
不足の事態に慣れない少年……二代目魔王は、必死の説得を試みる。
心のどこかでは徒労に終わりそうだ、と思いながらも。
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