プロローグ 赤と黒

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英雄クランベルク……この世界に生まれた者ならば誰もが一度は耳にする名だ。 その彼女が……今、目の前にいる。 「よいしょっと。ほら、まずは仲直りしようか?」 二人を立ち上がらせるクランベルク。その口調や扱いは、まるで子供を諭すかのようなそれで。 「……いや、実際大人と赤子のようなものか」 実力差を理解していた朱い勇者は、素直に従った。 「私は……アスラ・スカーレットハート」 「俺は凛々崎修斗。名目上の二代目魔王……だけど、わかるように、俺なんかよりフィアの方が強い」 お互い名を名乗り、一応は和解した、ということに。 その様子を見て、腰まで伸びた、ふわふわした質感のクリーム色の髪を持った、黄色い瞳の女性……フィア・クランベルクは朗らかに笑んだ。 「いつか、出逢えるって信じてたよ。勇者に」 その言葉は、どこか深みのある……しかし、少年修斗も少女アスラも、理解は出来なかった。その言葉の真意を。 「アスラ、歓迎するよ。ようこそ、私たちの家へ」 フィアに促されるままに、2人は城の入り口に踏み入れる。 そう、勇者と魔王の交わるこの日から…も物語は動き始める。
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