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……懐かしいな、俺の小さな頃から何も変わらない公園。勇者召喚に巻き込まれる前日も弟や妹と遊んでたよな。
公園の中心にある巨大な犬の遊具。滑り台・ジャングルジム・ブランコ・鉄棒・砂場の全てがまとめてある。少し色あせた感じがするが、何も変わってない。
青空と川公園という、よくわからない名前なのだけど、この地域の人はそんな言い方をしないでこういう風に呼ぶ。
犬公園と。
「戻ってきたんだな、地球に、日本に、俺の生まれ育った街に。」
ついつい呟いてしまう。勇者召喚によって異世界アースガードに行き、勇者召喚によって地球に戻ってきた。
アースガードでの生活は辛いの一言。どこの馬の骨かわからない俺を雇ってくれる仕事はなく、ギルドでの依頼を受けていく日々。
依頼は簡単な物から難しい物まで多種多様にあって、ギルドランクが低いと貰える報酬も少ない。これは小説やゲームの中の設定と一緒。
街の外に出ると、魔物や魔獣といった人を襲う化け物がウヨウヨしていて、依頼をするのも命懸け。
街は結界に護られていて中は安全、外は物凄く危険。依頼が街の中である時はいいが街の外にしかない時は躊躇する。
簡単な採取の依頼の物でも魔物や魔獣に会わないなんて事は不可能だったな。人の匂いに敏感な奴等からは、そうそう逃げられない。
何度も死にかけて、一緒に行った奴も食べられたりしながらも俺はなんとか生き延びてきた。
死と隣り合わせの生活を送っていた5年目に俺はある力に目覚めた。
この力のおかげで魔物や魔獣に狙われても簡単に逃げれるようになり、依頼の成功率は90%以上になるまでに。まあ、低ランクの依頼しかしないからだとも言われてきたけどね。
そう言われても低ランクの依頼しかしないのには理由があって、まず一つ目はランク上げをしなかったから。ランクを上げると報酬が多い依頼があるが、その分危険も増す。ハイリスクハイリターンって事。
二つ目は有名になりたくないから。高ランクの依頼をやれば、ランクも上がる。ランクが上がると、良い意味でも悪い意味でも有名になってしまうんだな、これが。
アースガードで出来た友人がまさにそうで、色々大変な事になったんですよ。なので俺はチマチマと低ランクばかりをやっていたんだ。
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