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クッ!……落ち着け。落ち着くんだ。クールになれ、大護。魔法使いってのはパーティーの中で常にクールでいないといけねえんだ。パーティーは誰もいないが。
治癒魔法しか使えないとはいえ、俺も魔法使い。アッチで悪霊やゴーストと幾度となく戦ってきたじゃないか。そう、何も慌てる事はない。慌てる事はないん──
ダメだ、やっぱ無理!アッチの奴らは非現実的な感じだったから何とかなったけど、この子は無理だ!
日本の幽霊は怖ぇぇよ!ハンパない!マジでハンパないから!何ていっても現実的で誰にでも起こりうると思うし。子供の身長程だが、何故かチョンマゲなのも余計に怖さが増す。
ま、まさか!お盆?お盆が近いからなのか?
……うん、アレだ。今の流行りな感じで言うならYSGなのかな。
幽霊と遭遇、Y(幽霊と)S(遭)G(遇)。だからYSG。
多分使い方は間違っていないはずだ。昨日テレビでコレを使う元祖の人を見たからな。
はあ、どうしようか。このまま買い物に行くのは無理だ。ずっと視界に入ってるのは落ち着かない。後ろにいるのも怖いが、ずっと目の前はもっと怖い。
コイツめ、何が目的なんだ。何も持ってないし出来る事はないぞ。幽霊なんて初めて見たからな、この世界では。
ホームセンターがもう見える所まで来たが、まだいる。何だよ、この絶妙な距離感はさ。やべぇな、取り憑かれたら嫌なんだけど。
あー、仕方ないか。今日は帰ろう。指輪の中を整理するのはいつでも出来る。ヤル気になった時に一気にやりたかったがな。
よし、逃げ─いや、帰るか。うん違うぞ、これは違う。断じて逃げる訳ではない。戦略的撤退ってヤツだ。
「アッチでも敵わない魔物や人から撤退しまくったからな。そう、逃げる訳ではないんだ。取り憑かれないように呪われないようにするだけだ。戦略的撤退なんだ。」
そう自分自身に言い聞かせて、振り返った瞬間に走り出す準備をする。こういうのはタイミングが大事だからな。
今か?……いや待て、もう少し心の準備が出来てからだ。
よし!今だ!右足を前に踏み出すと思わせ、左足を軸にして左回りに180度回転し、そのまま全力で走り出──
「おじさん、拙者の事が見えてるよね?」
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