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 次の朝、二人は町の外れに来ると、そこには三十人ばかりの男が集まっていた。その中には数人の女、年若い成年も混じっていた。皆、未開の地の調査に出向く者だ。 「たったこれだけか。この町もホント変わったな」  アーリオは落胆した。彼が知るこの町は、賞金が出る所や獣の討伐などと聞けば血の気の多い人間がわんさかと集まり、集合場所では肩が触れ合っただけで喧嘩が起こっていた。 「集合時間が過ぎたので、これから受付をする。名前を記帳し番号の入った腕章を受け取ったら、行動開始だ」  どこからか指示を出す声がし、集まった者達に青い制服を着た年若い兵士達が腕章を配り出した。そしてアーリオの前に来ると腕章を手渡して、ノートに名前を書く様に促した。 「君は僕の班だから、しっかり頼むよ」  青白い顔をしたその青年は、眼鏡の縁を触りながら言った。  カムイが後ろから笑いながら耳打ちした。 「な?言ったろ。坊やを守りゃ良いのさ」 「なるほどね」  集まった全ての者に腕章が渡ると、兵士を先頭にして列が組まれた。  整列すると或る事に気付いた。中には民間人が取り入れずに、制服を着た者達のみで組まれた班が幾つかあったのだ。  その班は他の班を取りまとめる青年兵と同じ制服を着ていたが、襟元と袖に装飾がしてあった。  そして何より鋭い顔つきと緊張感に満ちた雰囲気が漂っている。 「ありゃハッシャリオール兵の精鋭だ。未開の地の『痕』の調査を担っている。あんな危険なとこに行くなんて気の毒にな」  未開の地の奥に行けば行く程『痕』の力は強まっていった。木々は深く、霧が濃くなり、生き物もより巨大で危険になっていく深部の全貌は、未だに解明されていなかった。  その精鋭班の先頭に立つ男は、腰の剣を引き抜き天に翳した。  
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