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「おい!こっちはオーケーだ!どうする?このまま落とすか」カムイは腕に力を入れる準備をした。それと同時にアーリオは手を挙げた。
「ったく、何を手なんか振ってんだ……」
呼びかけようと声を出そうとしたその瞬間だった。
カムイは自分の意識が遠のくのを感じた。「脚に力が入らない。ヤバい……」。気を失うというより、レジャー施設で高い所から落ちる一瞬の間の様な、重力が失われた、ゼロになったような感覚が襲う。
途端に意識が戻った。いつもの思考回路。現状。青年兵を締め上げている行為もその意味も理解している。別に気を失った訳でもない。しかし何故か目の前に広がる世界が若干明るくなったような、白くなったような気がする。
「おい!カムイ」
アーリオが声を掛けた。いつの間にか自分の横に居る。
「おぉ、どうした。あ、あれ?こいつ気失ってない?」
カムイは青年兵の首が項垂れているのに気付いて「しまった!落としちまったか」と舌打ちした。
「いや、大丈夫。お前じゃない。悪いが力持ちのカムイ君、そのままこの新兵を担いで集合地点に戻ろう」
そして、二人は来た道を戻っていった。
カムイは一人背負っているのに、地面を踏みしめていないような妙な心地だった。
「アーリオ」
「あ?」
「いや、……なんでも無い」
「さっきから、お前なんなんだよ!?」
集合地点に戻るまでに同じやり取りを三回もしていた。
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