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かつて、神々は世界を形作っていった。  乃ち力強さは大地を、清々しさは空を、偉大さは海を、愛しさは愛を、魅惑さと醜悪は夜と闇を作り出し、邪は封じられた。  最後に神々は自らの残滓を寄せ集め生物を創ったが、その時一瞬の隙をついて、封じきれなかった邪が生物に取り付いたのだった。  そして、飲み込まれし者は邪の隷下となった。  神は目を光らせていたが、邪の隷下達は強かに好機を狙っていた。力を蓄え、己の封じられた主に代り『魔王』などと自称し世界の掠奪を目論んだが、その都度神々に選ばれし勇ましき民が賢さを以て世界を守っていった。    それが『英雄伝説』の始節、『世界誕生』である。    危機を脱した神は世界を人に託し、彼の地に戻っていった。  大地にはそれまでの大いなる争いの『痕』が残された。その『痕』は土地を肥やし、動植物を甚だしく成長させ、鉱石を強く美しくさせた。 『痕』の恩恵を巡り、愚かしくも人は互いに領土争いを始めたのだった。  先陣を切った者は領主と呼ばれた。新天地開拓期が訪れると、その領主達の争奪戦は最高潮に達し、血で血を洗う時代が到来した。その中で『モルドナ=シュミット家』『ミュラー=ローゼンハイン家』『ニコライ家』の三つの家柄は、他の領主達を抑え、広い領土と強い権力を獲得していった。  開拓期が終わると、より広い領主が高い位の称号を得、下位の称号の領主が従属する『領地制』が確立された。そしてそれらの称号を与える権限を持つ十五人議会『パルテノン』は、有力三家『モルドナ=シュミット家』『ミュラー=ローゼンハイン家』『ニコライ家』に、『マークェス』の称号を与えた。  それは神に託された真の統治者の称号『デューク』の座に次ぐものであり、世界統治は着実に迫って来ていた。
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