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「お、そっちはどうだった?」カムイは部屋から出てくるアーリオに近づいた。 「いや、別に大した事じゃない」 「俺の方もだ。なんだか形式的過ぎたからよ。てっきりお前に用事があるのかと思って」 「何で俺なんだよ?」 「お前『痕』で妙な魔法唱えただろ?」アーリオは心臓が一度大きく鼓動するのを感じた。 「昨日も誤摩化されちまったがよ、あれは一体なんなんだ?」  カムイの眼は真っ直ぐアーリオを捉え、それを一目見てアーリオは白状する事を覚悟した。 「あれは……」  その途端、アーリオは自分の喉の辺りに焼けるような痛みが走るのを感じた。自分の血液が沸騰し煮えたぎるようなその痛みは、アーリオの発声を封じた。見た目には何の変化も無く、痛み以外は呼吸も出来る。カムイが何も気付かずに、言葉の続きを待っていると後ろから突然声がした。 「あれは動きを封じる類いの魔法です」  その声が自分たちに向けられている内容だった事以上に、美しく透き通った声に反応したカムイは、反射的に振り返った。すると、そこにはハッシャリオール兵の制服に身を包んだ女性兵が立っていた。胸元まで伸びた真っ直ぐな濡鴉の髪は、とても艶やかで美しかった。 「動きを封じる?」 「ええ、あの時何か目眩のようなものを感じませんでしたか?」 「あ?あぁ、何か気分がすっとすると言うか……あぁ!抜いた時に近かったな!」 「抜く?」 「だから」とカムイが手を股間に持って行くとアーリオが「おい!」と遮る様に声を出した。そしていつの間にか痛みが消え、発声がいつも通り難なく出来ている事に気付いた。 「で、ねーちゃんは何の用?」カムイがその女性兵にぶっきら棒に尋ねた。 「申し遅れました。諸事情により今後アーリオ・ガルバロ氏に同行致します、イザベラ・ビャクレン・アマノと申します」 「同行?」カムイがアーリオの方を向くと面倒くさそうな顔で「らしい」と答えた。  カムイはしばらくイザベラを眺めると「だったら歓迎しよう」と言って不適な笑みを零し「俺より酒が強かったらな」と付け加えた。
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