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「俺も同じ事を聞いたよ」アーリオはそう言ってコーヒーを一口啜った。
「盗人じゃない。この小僧、分かってるだけで五人斬ってる」
「こいつが!!?」カムイは反射的に大きな声で聞き返したが、その声が二日酔いの頭に響いたのか「っつ?……」と言い、また元の体勢にゆっくりと戻った。
「そんな凄腕なのかよ」今度は小さな声で、写真を手に持ちじっと眺めた。
すると青年の抱える剣から写真越しに、何か訴えかけるようなものを感じた。それは徐々にカムイの心の中で広がり、焦燥感を生み出していった。
「こいつがもっている剣、まさか『曰く付き』か……」
「あぁ、『魔剣抜き』だ」
「魔け……。最悪だな……」
この世に武器は無数にある。ただ、前の使用者の強い情念が残った武器や、職人の魂が籠った武器、『痕』に長時間放置された武器など経緯は様々だが、使い手にそれ本来の攻撃性以上の何かを付帯させる武器は『曰く付き』と呼ばれていた。
その中で完全に使い手の精神を乗っ取ってしまう類いがあり、それらはマフィアでさえ取引を躊躇う程の「危険物」であった。只一人、『死の商人』と呼ばれる者を覗き、闇ルートでもその危険物を扱わない事が暗黙の了解であり協定であった。
その危険物、事、剣に関しては鞘と言うセーフティがある為に、使用者に求められるものは剣を扱う技術では無く、剣を抜くという動作のみになる。騎士や剣士の中で、魔剣の使用者は侮蔑も籠められ『魔剣抜き』と称され、忌み嫌われていた。
「詳しい事は、イザベラが来てから聞く事になってる」
カムイはピッチャーの残りを飲み干した。
暫くして、イザベラが「お待たせしてスミマセン」と店内に入って来た。
「で?この『魔剣抜き』をどうしろっていうんだ?」カムイが無愛想に切り出した。
「この件に関して領主に事件としての承認申請をしていません」
それは答えにはなっていなかったが、アーリオには続けた。
「斬れと」
「速やかに処理して下さい」
アーリオの直接的な言葉に、イザベラは予め決められていた台詞を読むように、機械的に良い述べた。彼女の眼は氷のように冷ついていた。
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