23/30
前へ
/32ページ
次へ
町には至る所に張り紙がしてあった。そこには一人の女性がにっこりと笑っている。 「今回の開通式にこのアマーリアってお嬢様が参列するんだろ?」カムイはその諄い程並び行く笑顔に釣られたのか、ふと話題に出した。 「ああ、周辺地域の改革にえらく積極的で、今回の領内に道を通す計画の立役者でもあるしな」 「へぇ……」  カムイは気配を感じた。ポスターから目を離した瞬間だった。  アーリオの話を聞き、目をそちらにやったその時、じっと睨まれているような気配がしたのだ。カムイは咄嗟にポスターに視線を戻したが、やはりどれも同じように笑っていた。 「俺は何をビビってんだ」カムイは舌打ちをしたが、胸の鼓動は高鳴っていた。 「で、写真を撮ったヤツって?誰なんだ?」アーリオはイザベラに聞いた。「フリーのライターです」 「何でフリーライターの写真が、こんな極秘っぽい事に使われてんだよ」カムイは意地悪く食って掛かった。  すると「まぁ、色々と。中略しまして、こういう結果に落ち着いている所です」とイザベラは流すように言った。 「なんだよそれ、お前さっきから俺たちの質問に全然答えないよな?」カムイは感情的になったが、アーリオはすっと手を前に出し彼を制した。 「言えないんだよ。知らないと言っても良い。彼女ですら曖昧で不明瞭な言い回しで上から命令されて、手伝わされている末端なんだ」  カムイは一度舌打ちをした。 「流石、元ピュロマーネ」イザベラは独り言のように小さく呟いた。しかしアーリオには聞こえていたらしく、「そんな部隊は存在しない」と切り捨てた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加