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「どうした?」 「いや、何でも無い。ただ……。いや何でも無かった」  少し顔を紅潮させ、目が泳いでいる。そしてカムイは突然閃き、「こいつまさか。ビビってマネキンぶっ壊したな?」という思考に行き着いた。  カムイがニヤニヤしていると、すぐ背後で人の気配がした。イザベラだ。 「なんかちょっと遅かったな」 「すぐ移動するとぶつかるんで」そう言いながら、彼女は肩の埃を一払いした。「言えよ、そう言う事」カムイが彼女に突っ込むと、「その前に行ったのは貴方でしょう」と冷たく返した。 「で、ココはどこなんだ?」アーリオは彼女に尋ねた。 「ココは、さっきの農業地の先にある地域です」  それはヴァインに来た賞金稼ぎの中でも、町に居られない訳あり人間が根城にする危険な場所だった。と言ってもそれは一般人にとって危険と言う意味であり、この三人にとっては別段警戒レベルを上げるような地域ではなかった。 「移動の手段がバレると面倒なので、この廃屋選びました。近くの安宿に、例のフリーライターが住んでいます」  イザベラ自身は既にこの場所に来た事があった。空間移動の着地ポイントの設定もあったが、アーリオ達の強力を仰ぐ前にフリーライターとも会っていたのだ。知った経路を進み、暗い廊下の方に行く。辺りが見えなくなると、人差し指を立てる。すると指先に白みがかった明かりが灯り、廊下を照らした。 「あ、れ?」 「どうした?」 「いえ、前来た時は、ここに不気味な人形があったんですけど……。バラバラになってる……」  イザベラはそれを人つまみすると、途端にボロボロと崩れた。 「気をつけて下さい。破壊されて間もないです。しかも相当な熟練者です!」 「……分かった」アーリオは頬を赤くしながら呟いた。カムイは笑いを堪えるのに必死になりながら、肩を振るわせていた。
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