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「お前も賞金稼ぎかい?にーさん」
「ん?あぁ、まぁ……そんなもんかな」
「なんだはっきりしないな。そんなんで飯が喰えてんのかね?えぇ」
酒場の主人は、飯の支払いも出来ていない自分の事を棚に上げた物言いと古くから知るアーリオに難癖をつけるその男に、腸が煮えくり返りそうになった。
「お客さんね、この人は……」
そこまで言ったが、視線を感じふとアーリオを見ると、彼は小さく頭を振った。それを見て酒場の主人は我に返った。自分の生業は酒を注ぎ、飯を作る事。人の過去を無闇に他人に言う事が、どれだけ無神経で無粋であるか。
「なんだ?」男は主人を見ながら、聞いた。
「……いや、何でも無い」
途中まで言いかけた主人に男は聞き返した、口籠る主人に訝しい目を向けた。
「まぁ、良いから飲みな。マスター、彼に酒を」
「ほぉ、中々話が分かるね。にーさん。俺と明日付き合え」
男が言うには、明日の朝、ハッシャリオールの兵士が取り仕切る未開の地の調査があるという。街道が出来た結果、人が行き交うと未開の地にどういった影響が出るのか、獣が街道沿いに集まって来ていないかなどを調査する為に民間からも調査員を募っていた。
「何、難しい事はありゃしねぇ。ただ真新しい制服を着た坊やを守りゃ良いのさ。調査とやらはその坊やがやるんだからよ」
「へぇ、面白そうだな」
「お!?やるか!じゃぁ、一緒に行こう。俺はカムイって名だ」
「アーリオだ」
二人は右手を握り、酒を酌み交わした。
カムイは真虎を仕留めた時の話を熱心に語り、アーリオはたまに頷きながら黙ってそれを聞いていた。
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