第1章

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祖父の家の近くには祖父の姉が住んでいた。 母の母親代わりであり、私の祖母代わりの存在。 私はこちらにも上手く甘えられなかった(というかこの人は怖かった)。 祖父の姉は、気が強くて、子供だった私には、そのはっきりした物言いがとても圧力的で。 今思えば、可愛がってくれていたんだなと感じる。 でもあの頃は、少し怖い人という印象だった。 祖父の姉も一人暮らしだったので、その家に集まることも多かった。 私の好きなエビ入りのお好み焼きを祖父が買ってきてくれたり、 エビフライの出前をとってもらったりした。 私と祖父はエビフライが大好きで、お出かけしてもエビフライを一緒に食べた。 うちの家族3人(父母私)と祖父でドライブに行ったりもしたし、 お正月は元旦に祖父の家でお手製の料理を食べるのがお決まりだった。 家まで、筍や私の大好きなおこげ付きの椎茸ご飯を持ってきてくれたりもした。 お小遣も毎月祖父がくれて、ときたま引き出しの中に無造作にやたら貯まった1円と5円をどっちゃりくれたり…。 家に来る時も、 助手席に乗る私を後部座席から呼ぶ時も、 祖父は大きな声で 「あいぃ~」 と呼んだ。 車の中でそう呼ぶ時は、 大抵食べた飴の包み紙を、 後ろから放り投げてくる。 何が楽しいのか、祖父はいつもいじわるに笑っていた。 そんな事で呼ぶなんてと何度も思った。 もっといいものくれるならいいけどと。 でも。 何より祖父のその声は、 今も耳に残って離れない。
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