山の神 里の神

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サクヤの系統は、桜の女神。 此花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)の流れ。 富士山の守護である、日本の山神の頂点の流れ。 花に実も種も宿さない桜。 種ではなく、子ではなく。 桜は折った枝を苗木にして姉妹を増やすしかない、圧倒的な美しさの代償に子を産めない美麗を極めた孤高の女神。 「カノエ…」 「な…なんだよ…?」 「お前は…人間というものが…大嫌いじゃったな…?」 「嫌いだ。サクヤは…バカだぜ」 「そうか…。 でもな…?お前は…嘘つきじゃ」 「う…うっさい…!」 「二十年に一度しか…、我らはノノを遊ばしてやれんのじゃぞ…? なぁ…? せめて…いま一時…。遊ばせてやる事さえ出来ないのなら、何が神であるのじゃろ? 何を持って、我らは神を名乗れるのじゃ…? 頼むぞ…。我が背…。 頼むから…、遊べる神の庭を作ってやろうではないか…」 「しょうがねーな…。 ただ、領域は限られるぜ?」 「そうじゃの…。 おい。一平!」 「は…はい!?」 「お前たちの遊び場は、我らの包める領域だけじゃ。 我が社と、この社。 あとは、それを結ぶ細長い区域だけじゃ。 しかし、その中では永遠に近い時間を遊ばせてやれる。 一平…。 お前の家は、領域から外れておる。 一度領域から出たら、もう吾たちさえ引き戻してやれん。 ノノと…遊んでやってくれるか?」 「わぁ!うん!学校の宿題もしないで遊んでて良いんですね!? 最高ですね!」
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