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小川のせせらぎの岸辺。
陽の光をキラキラ躍らせる水面。
サララ…という清らかな流れの音色に合わせるように、山鳥たちがあちこちから歌う。
だから、どうやらそよ風の妖精たちまで嬉しくなってしまったようで、草木の間をダンスしながら走り抜ける。
すると、木々や草花が拍手喝采するように葉音を響かせる。
千秋が「うぅ~ん…」と伸びをしてから、カバンから小さなスケッチブックを取り出した。
「これが神の庭かぁ…!
さすが、神様に守られた世界だ。
空気まで輝いてるみたいだね。
絵描きとしたら、やっぱりこれはスケッチさせてもらわないわけにはいかないな」
そう言って、岸辺に座って絵を描き始めた。
一平もうららかな光景に高揚した笑顔を浮かべつつ。
「わぁ!綺麗だねぇ!
ノノくん!川遊びしようよ!」
しかしノノは少し苦笑いして。
「川…、流れてるだの…。
危ないだの…。
怖いだの…」
「平気さ!ほら!」
一平が靴と靴下を脱いで、バシャンと小川に飛び込んだ。
「うわぁ!本当に綺麗な水だなぁ!
ノノくんもおいでよ!
気持ち良くて楽しいよ!?」
そう言う一平をしばし上目遣いで見詰めていたノノが、少し「うにゅぅぅ~…」と悩んでから。
ピチャ…。
爪先で水面をつつくような動き。
まるで子猫の水遊びだ。
すると、千秋が少し手を休めて。
「ノノくん?
無理しないで大丈夫だよ?」
するとノノは千秋の方を振り返って「うにゅ…」と再び考え込む。
そんなノノに、一平がバシャバシャと水しぶきを掛ける。
「ほーら!ノノくん!
もっと掛けちゃうぞぉ!」
光の粒が、蝶のように風に泳ぐ。
水を引っ掛けられたノノが、少し驚いた顔をしてから…。
「ひゃははは!
オラも負けないだの!」
バシャン!
満開の笑顔でノノも小川に飛び込んで、一平にバシャバシャと水を引っ掛けてお返しをする。
「わっ!やったなぁ!
よーし!そんならもう手加減なしだかんな!」
「ひゃは!ひゃはは!」
そんな二人の光景を眺めて、千秋が思わず微笑みをこぼしながら。
「あぁ…。本当に…ここは…神の庭なんだな…」
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