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サクヤはポヤン!と小さな衣を取り出し、招き寄せた一平に着付けた。
「サ…サクヤさま…!?
こ…これって…!」
神璽しているノノの水干と同じデザインで色違いの水干。
「カノエのキーホルダーを持っとった吾の専属スタイリストの機織り姫な?実は注文しとったこの品を届けに来てくれとったんじゃよ。
カノエや千秋を驚かせてやろうとな?生地から縫製から…いろいろこだわっての?
そなた、神璽したノノを見て、興奮しながら『僕もいつか絶対に神璽する!』とか言うてたじゃろ?
じゃから…な?
確かに神堕ちはしてしまったが…、別に人じゃからと水干を着てはならぬと言うものでもなかろう?
ほれ。出来たぞょ。ノノと色違いのお揃いじゃ。
二人並んで見せてたもれ」
並んだノノと一平の襟元などを少し直したりしつつ、誇らしげに微笑む母の顔。
「おぅおぅ。よぅ似合っとるぞ。
のぅ?千秋。アラシ。よぅ見てやっておくれ。
トゲも早く帰って来れば良いのぅ?きっと驚くに違いないわ。
おほほほほ…。
……せっかくなのじゃからの?カノエにも見せてやろうと思っての…」
お揃いの水干姿の可愛い我が子たちを満足そうに微笑んでひとしきり眺めていたサクヤ。
その彼女が、やがてフッとうつむいて、囁く。
「キリが無い…。未練になる…」
それから立ち上がり、毅然と顔を上げたかと思ったら、凛と美しく身構える。
「サクヤさまっ!?何をなさってるんですかっ!?」
千秋が慌てて叫ぶ。
「ん…?見て判らぬかぇ?
昔、一平がお前にした事を、今度は吾がカノエにするだけじゃ」
神の大罪の一つ。
禁断の、反魂の神楽舞い。
「サクヤちゃまっ!?」
驚いて困惑を極めるノノの隣で、水干姿の一平も仰天しながら。
「なに言ってるんですかっ!?あの後…結局は全員を泣かせちゃったんじゃないですかっ!
だから僕は今でもとても悔やんでて…反省してるんです…!
それも…人じゃなくて…神を復活させる反魂を…今のそんな状態のサクヤさまがやったら………絶対にサクヤさまの方が神気を使い果たして…崩れちゃうじゃん…」
千秋も。
「俺には判ります。
サクヤさま。そんな事をしても、カノエさまを苦しめるだけです。
そんな事よりも、サクヤさまがノノくんを立派に昇華させて、本当の神様に育て上げるんです!」
三人でしがみつき、必死の思いで止める。
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