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ひとしきり水遊びを楽しんだ一平が、美しい自然に囲まれながら言う。
「あーぁ…。
家に帰れたら、釣竿持ってこれるんだけどなぁ~」
「うにゅ…?」
ノノが小首を傾げるから、一平が笑って。
「釣りだよ!魚釣り!
釣れた時、すっげー嬉しいんだ!」
「お魚…欲しいだの…?」
「ドキドキするんだよっ!?」
するとノノが「うにゅにゅ…」と少し川面を眺めてから。
「見付けただのっ!!!」
バッシャーン!と川にダイブしたかと思ったら…。
何と両手で川魚を掴んでいた!
「一平くん!捕まえただの!」
「えっ!?手づかみ!?
えぇっ!?マジでっ!?」
北海道の熊が鮭を漁るのに匹敵するような鮮やかな野生児の漁の技…。
「捕っただのぉ~!」
「す…すごいね…。ノノくん…」
呆気に取られている一平に、ノノがキョトンとして訊ねてくる。
「お魚、欲しかったと違うだの?
あいっ!あげるだの!」
「い…いや…。生きたままもらっても…食えないし…」
「うにゅ…?焼くだの?」
するとノノが川魚を器用に片手に持ちながら、反対の手の人差し指をピョコンと立てたと思ったら…。
ンボォォォォ──!!!
指先からガスバーナーのような激しい火炎が噴き出した!
「わわわっ!」
一平が度肝を抜かれる。
しかし、ノノはハッとした。
「ぁ…。
神通力…使っちゃメッだの…」
「もう良い!もう大丈夫だから!
草ダンゴ食べたばっかで、僕まだお腹が空いてないから!
魚は放してやりなよ!」
「ふにゅ…?良いだの?」
「良い!うん!もう良い!」
すると、ノノが少し魚を見詰めてから。
「バイバイだの!」
パシャ…と魚を川に返してやった。
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