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そんなノノが、一筋の涙を流しなから小さく笑って。
「いずれ散り逝く定めと知りながら…、まるで箱庭のネズミたち…。
その虚しさなど…、今更判っていながらの大競争…。
いつかは散るが定めなら…、この世はまるで華のよう…。
咲きませ。
どうか…咲きませ…!
どうせいつかは散る定めなら…。今一時だけの夢だとしても…。それなら…だから尚のこと…!
華たちよ!
どうか…この一夜の儚い夢に…思いの限り咲き誇れっっ!!!」
鳴り響く神の笛の音。
奇跡が起きる。
季節外れに、一斉に狂い咲きする桜の華々。
「あぁ…。あぁ…。
また…何ということじゃ…」
サクヤが思わず泣き伏す。
舞い散る、若桜の君の桜吹雪。
やがて、カノエが眼を開く。
「ん…?あれ…?何かの冗談だったのか…?」
そして周りを見渡し、最後に美しく笛を吹くノノを見詰めて。
「何か…いろいろ聞かなきゃなんねーみてーだけど…。
まぁ…さ?」
カノエが一度『んっ…んん~…!』と大きく背伸びをして。
「何か…もう良いや!なっ!?」
サクヤが泣きながら。
「カノエ…。すまぬ…。
吾が付いておきながら…。
すまぬ…。本当に…すまぬ…」
そんな妻にカノエはカラリと笑って軽やかに。
「良いよ。まだもう少し、子供を可愛がってやれるってこったろ?
ま、そういう事なら…それで良いんじゃネ?
しっかし…まさか…アイツ…、男の桜神になるのか…?
何か…反則技みてーじゃネ?」
「そうじゃの…。
吾も…たまげとるわ…。
それもそうじゃが…。
カノエ…?本当に…生き返ってくれたのじゃの…?」
サクヤがたまらずカノエの胸に顔を埋めるから、彼は彼女をガッシリとシッカリと抱き締めて。
「泣かせちまって…ゴメンな…?
これからも…一緒に居ような…?
ずっと…一緒に…居ような…?」
狂い咲きの桜咲く、夏の桜が舞い散る月夜の出来事。
「なぁ…?サクヤ…?」
「ん…?」
「そりゃ…俺のせいで…お前らに辛い思いをさせてんだけどさ…?
なぁ…?俺たちって…そんなに不幸なのかな…?」
だから、サクヤはこっそり微笑んでから。
「さぁ…?
それは…子らに聞かねばの…?」
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