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すると、山林に風が吹き抜けたのと同時に、小さな男の子を連れた美女が忽然と現れた。
「おぉ。
やはり千秋の気配であったか」
「これはサクヤ姫。
いつもお美しくおいでで」
すると、山神サクヤ姫が美貌を更に煌めかしながら笑う。
「おほほほ…。
苦しゅうない。
ささ。こちらに参るが良いぞ?
先ほどノノが目覚めたからの?きっとお前もやって来るだろうと思っていたのじゃ」
サクヤの後ろに隠れながら、顔だけピョコッと覗かしている小さな男の子が興味津々な目で見詰めてきている。
「はい。ノノくんが大好きな草ダンゴを買ってきました」
「おぉ。そうか。
ノノ。良かったな?ちゃんと手を洗ってから食うのだぞ?
ん…?
何じゃ千秋…。
お前も子連れかえ…?」
「山神さま!こんにちは!」
「おぉ。おぬしは確か山中の家に住んどる子か。
名は何と申したかの?」
「一平です!」
「ほぅ。一平か。良き名じゃ。
ほれ、ノノ。
挨拶したらどうじゃ?」
すると、サクヤを見上げたノノと呼ばれた少年が、ちょっと恥ずかしそうにしながらはにかんでニパッ!
「オラはノノ!
野のワラシだの!」
「ノノワラシ…?」
一平が小首を傾げたら、横から千秋が優しい笑顔で教えてやる。
「ほら。家の守り神で座敷わらしって聞いたこと有るよね?
彼はこの山野の守り神…になるために頑張ってる野のワラシなんだ」
「神様になる為に…勉強中なの?」
すると、鎮守がムスッとしながら呟いた。
「まぁ、俺の跡継ぎだな。
ノノ。山はつまらねーだろ?
ほら。取り敢えずこっちに来い」
するとサクヤが美しいまなじりをキリリと引き締めて。
「カノエ!ウヌへの反省の時間はまだ終わっておらぬ!
おとなしくしとらんか!」
「あんだよ!
便所でタバコ吸ったぐらいで、なんでそんなに怒られんだよ!」
「臭いが付くではないか!
まったく!カノエは昔っからガサツよの!それでよぅ鎮守なんぞ勤まるものじゃ」
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