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優しく微笑む千秋に、一平が少し遠慮がちに上目遣いで訊ねる。
「あ…あのぉ…」
「ん?」
「村の皆が…、千秋さんはたまに変な事を言ったりしたりする…って」
「あぁ。そうだね。
ほら。俺は神様とか見えたり、不思議なモノと話せたりするから」
「え…?
僕も神様…見えてますけど…?」
「みたいだね」
一平が内心で頭を抱えた。
自分も将来、千秋のように変人扱いされるのか…!?
さすがに千秋を前にして言葉には出来なかったが、ちょっと遠い目になってしまう…。
カノエが淹れてくれた玉露を一口旨そうにズッ…と呑んだ千秋が、遠い昔に思いを馳せる。
「俺が初めてノノくんと会ったのも…、ちょうど一平くんと同じくらいの頃だったなぁ…」
サクヤとカノエは、月と言えば月見か狼男かでワイワイ論争している。
「もう…二十年かぁ…。
ふふ…。
あの頃と何も変わらないなぁ~。カノエさまも…サクヤさまも…。
…ノノくんも。
変わったのは…俺だけだな…」
「え…。ノノくん…二十年前に…?
え…?でも…僕とあんまり違わないくらいの年じゃなかったの…?」
「野のワラシは、二十年に一度目覚めて、山から野に下りてくるんだ」
「目覚めて…って…。
じゃぁ…二十年も…眠ってたの?」
「彼は、深く眠らなきゃいけないんだよ。
ただ、二十年に一度だけ、神様になる勉強をしに野にやってくるんだ」
当のノノは、草ダンゴを「んふ!んふ!」とか鼻息荒く食べるのに夢中になっている。
「ふぅーん…。
神様になる勉強か…。
なら、願い事とか叶えてくれるのかなぁ?」
「んん…。たぶん一平くんが思う神様への願い事…っていうのとはちょっと違うだろうけどね」
「え…?」
「神様になる勉強…って言うのはね?神通力っていう神様の力の使い方を習うんじゃないんだ。
力を使わない訓練なんだよ」
「どういう事ですか…?
それじゃ…いつまでも神様になれないんじゃ…?」
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