第 1 章

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食事を終え、斉彬が退室し、於一がいちと供に部屋を出ようとしたとき、 「姫様、いち殿をお借りしてもよいか?」 と清猷が呼び止めた。 「はい、よろしゅうございますが・・」 於一はいちを残し、迎えにきた侍女と部屋へ戻った。 「いち殿、姫様が殿の養女になった理由は聞いておるか?」 「はい、今和泉の母上様からお聞きしました。ただ、姫様にはまだ伏せておくようにと申しつけられております。」 「そうか・・・。姫様は知らぬのか・・。」 「大丈夫でしょうか?」 いちは、今まで自由に生きてきた於一が、島津本家の姫として、いろいろなしがらみに耐えられるか心配であった。 「ここでの暮らしは姫様にとって苦痛でしかないかもしれぬな」 「私は、姫様に養女になった理由を話していただいたほうが、事はすんなりと進むと思います」 「殿は、もし御台所の話が頓挫した時のことを考えまだ伏せておられるのだ。少し様子をみて、殿にお話してみよう。」 「はい・・・。」 こうして、於一といち、二人にとって高揚と不安に満ちた一日は終わった。
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