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「なんの、噂だって?」
あたしは疑いの眼差しを持ってクラスメートの女子に声をかけた。
すると、学級委員長である山内さんが、え、知らないの?と声をあげた。
「知らない」
「ナルミナはほんと、そういうのに興味ないよね」
と、これは別のクラスメイトの声。
ちなみに、ナルミナ、とは、成瀬美波の略だ。
「去年の冬にあった、県の一斉模擬試験。総合得点、2位だったのよ、長瀬先輩!」
「…………それ、マジ?」
「マジもマジ、大マジ」
山内さんが、当の本人差し置いて力説している。大マジの意味はいまいちわからないが、ほんとらしい。
あたしは自分の顔から血の気が引くのを感じた。
じゃあなんだ。県下一斉で2位だった人に、100点とってこいとか、お茶の子さいさいなことを言ってしまったってことか?
「で、どうなの?」
あたしたちの会話はどうでもいいのか、先輩が答えを急かす。
約束がなんのことかわからない山内さんたちが首をかしげている。
まずい。
約束が万一ここのメンバーにばれて噂が広まれば、停学、いや退学も免れない。
しつこいようだが、この学校は恋愛禁止なのだ。
「あ、えと、あたし用事あるの!みんなまた明日ね!」
言うと同時に、先輩の手を引っ張る。
右手に学生鞄、左手に先輩の手をつかまえて、あたしは颯爽のごとく教室を飛び出した。
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