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「あの、うっとうしいんですけど」
昼休み。
お弁当を食べ終わり、ゆったりとしたいこのひとときに、あたしはそう口を開いた。
あたしの隣では先輩ーーもとい、長瀬 優一が、それは楽しそうにお茶を飲んでいる。
「うん」
と、これまた嬉しそうに答えるものだから、ああ、この人には皮肉も通じなかったんだと頭を抱える。
長瀬先輩とは一応、彼氏彼女になった、らしい。
らしい、というのもあたしにはこれっぽっちも好きという感情がないからだ。
そもそも、あたしには『好き』という気持ちがどういうものなのかよくわかっていないし、いまのところ興味もない。
「先輩」
「うん?」
「邪魔です。うっとうしいです」
「うん」
だめだ、こりゃ。
昼休みが終わってもここから動くことはないだろう。
あたしは諦めて、読書をすることにした。
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