プロローグ 椿高校1年生6月

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今から、1年とちょっと前のことだった。 「成瀬美波さん、付き合ってください!」 1年C組の放課後の教室、そのど真ん中。 恐らく目の前の先輩はそんなことはどうでもいいようで、あたしの机の前に直立不動で立ちそんなことを言った。 教室ではまだまばらに残っている生徒たちが何事かとあたしを、いや、あたしたちを見ている。 どちらかといえばあたしではなく、王子様、と学校では有名な彼に夢中だ。 またかー。 あたしは、諦めのため息をつくと、ガタッと音をたてて椅子から立ちあがり、目線を先輩と同じにした。 とはいえ、あたしの方が背は低いのでどうしても上目づかいになってしまうのは仕方のないことなんだけど、もうそこから気にくわない。 「また、ですか? いい加減にしてくれませんかね。先輩とは付き合いたくありません」 ええ、なんで、とか、もったいない、とか、クラスメイトが勝手に囁き始める。 あたしは先輩を下から睨み付けた。
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