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由真ちゃんだ。
あたしは廊下の曲がり角を利用してこっそりと聞き耳をたてる。
やっぱりちょっとなんて言ってるのかわからない。
周りの生徒は関わりたくないのか、足早にその場を去っていく。
そのうちの一人が、あんたなにしてんのよ、という表情をあたしに向けてきたけど無視だ。
由真ちゃんに対峙しているのは女ふたり。ネクタイを見る限り1年生のようだ。
2対1だなんてなんて卑怯な。
1年生だとわかったけれど、よくよく目を凝らしても誰だかわからない。
正確に言うと名前がわからない、だ。
なんだあの女。
なんだかやばそうだな。
由真ちゃんのピンチ!ここはあたしが!
「なにしてんだ、あんたらは!」
「のっ?」
勢い良く曲がり角から飛びたそうとして、しかし、先に割り込んで入ってきたのは西原先輩だった。
割り込まれたことで整理ができなくなった頭が、変な指令を出す。
そのために『のっ』て言ってしまい、なんだよ、あたし、と意味不明な突っ込みを自分にいれる。
とりあえずこの状況把握に勤めようと脳を動かした。
由真ちゃんは今にも泣きそうな顔をしていて。
女ふたりは、やばいぞって表情をしていて。
先輩、なんか怒ってるし?
というかなぜここに先輩が?
え?あたしここに必要?
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