椿高校 1年生 10月

3/35
前へ
/428ページ
次へ
由真ちゃんだ。 あたしは廊下の曲がり角を利用してこっそりと聞き耳をたてる。 やっぱりちょっとなんて言ってるのかわからない。 周りの生徒は関わりたくないのか、足早にその場を去っていく。 そのうちの一人が、あんたなにしてんのよ、という表情をあたしに向けてきたけど無視だ。 由真ちゃんに対峙しているのは女ふたり。ネクタイを見る限り1年生のようだ。 2対1だなんてなんて卑怯な。 1年生だとわかったけれど、よくよく目を凝らしても誰だかわからない。 正確に言うと名前がわからない、だ。 なんだあの女。 なんだかやばそうだな。 由真ちゃんのピンチ!ここはあたしが! 「なにしてんだ、あんたらは!」 「のっ?」 勢い良く曲がり角から飛びたそうとして、しかし、先に割り込んで入ってきたのは西原先輩だった。 割り込まれたことで整理ができなくなった頭が、変な指令を出す。 そのために『のっ』て言ってしまい、なんだよ、あたし、と意味不明な突っ込みを自分にいれる。 とりあえずこの状況把握に勤めようと脳を動かした。 由真ちゃんは今にも泣きそうな顔をしていて。 女ふたりは、やばいぞって表情をしていて。 先輩、なんか怒ってるし? というかなぜここに先輩が? え?あたしここに必要?
/428ページ

最初のコメントを投稿しよう!

171人が本棚に入れています
本棚に追加