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「右手」
「右手?」
先輩が、あたしの右手を指して眉をひそめる。
なんのことを言ってるんだ、と右手を見て、再度、うわっ!と驚いた。
さっき、由真ちゃんのところで壁を殴ったせいで、拳が赤く腫れていた。
全然気づかなかったけれど。
どおりで派手な音がした、とひとり頷く。
が。
「いやいやいや、なんで知ってるんです!?」
あの場に先輩の姿はなかったはず。
てことは、見てたんだ。
聞き耳でもたてていたのだろう。
「見てた」
「どこから?」
「女がふたり由真に寄ってったところから」
最初じゃないか!
というかあたしより早いじゃないか!
驚いて口をパクパクするあたしに、再度先輩が、うん、と言った。
「最初から見てたけどさー。
西原くんが、『俺がいく』って言うから任せてたんだよな。
そしたら、いつのまにか美波も居合わせててさ。美波のこと、とめようかと思ったんだけど」
「…………………」
「それより、美波の方が早かったわけ。ま、美波より西原くんが早かったから、間抜けな『のっ?』が聞けたけどな」
そこでクスクス笑って、のっ?ってなに?とあたしをからかってきた。
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