プロローグ 椿高校1年生6月

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みんなは、そんなはずないとか言うけどあたしは目立つことは嫌いだ。 こんな公開告白みたいなことはやめてもらいたい。 そんな意を込めて、彼をみる。 「嫌だ。 だって美波、電話にも出ないし、廊下で会っても無視するだろ!」 しかしそれすらも彼にはどうでもよいことらしい。 美波、なんて気安く呼ばないで!と叫ぼうとして、すんででとどめる。 この先の一部始終を見ていたいクラスメイトの目線が痛い。 ここは人の目がありすぎる。 はあ、と秤でも測れないほどの重たいため息が出た。 「………ここでする話じゃないですね。他所にいきましょう」 そう言うや否や、あたしは先輩の手をとって素早く教室から抜け出した。 あ、逃げた、という生徒の声。 あたしは右手に学生鞄、左手に先輩の手を握りしめて廊下を走った。 廊下ですれ違う生徒は何事かとあたしたちを見るけど、いまはその視線すら気にはならない。 ただ1つ思っていたことは、 コイツめんどくさいな だった。
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