椿高校 1年生 10月

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「成瀬?」 うーん、と考えて言わないことにした。 「いやー、合唱部の音楽に聞き覚えがあってですね、このまま空を翔べたらなぁ、って考えてました」 えへへ、と笑ってみせると。 「頭の中身も空まで翔んでいくなよ」 と、真面目に返されてしまった。 「ところでさ、成瀬」 「はい」 「お前、生徒会に興味ないか」 「はあ? なに会ですか?」 うまく聞き取れなかったあたしに、太田先生は呆れたように言う。 「まさかほんとに頭の中身だけ空まで行ったんじゃないだろうな? 生徒会だよ、生徒会!」 「はあ? いえ、特に興味はないですが」 「そうか………ま、でも、俺はお前を推薦するから」 「え?じゃあなんで聞いたんですか!?」 言うと、けらけらと先生が笑う。 「一応、聞いとかないと不味いだろう?」 いえ、聞いたあとに生徒の意思を無視するほうがまずいです。 と反論しようとして、まあ、あくまで推薦するだけだから、と先生はまた豪快に笑ったので機会を失ってしまった。
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