椿高校 1年生 10月

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フッと先輩が笑った。 確かに、そうかもしれない。 由真ちゃんのように可憐でもないし、体型も空手のお陰でガッシリしてるし、身長も体重も女子の平均よりはるかにある。 まあ、そうですね、と返事しようとした時、音楽室の扉があいた。 「おー、ふたりともお疲れ」 入ってきたのは長瀬先輩だ。それから数秒遅れて由真ちゃんも来た。 「由真ちゃん大丈夫?」 さっきまですっかり忘れていたことを棚にあげてあたしが聞くと、由真ちゃんがにこりと笑う。 「うん、大丈夫。 あたしこそ、なんだかごめんね………。昨日、助けてくれたんでしょ?」 「あぁ、もうそのことは良いわ」 あたしは由真ちゃんに、ヒラヒラと片手を振った。忘れてくれの合図だ。 長瀬先輩はおそらく昨日のことを西原先輩に聞いているのだろう。 音楽室の隅でふたりでボソボソと話しているけど、内容は聞こえない。 「あのね、美波ちゃん」 「うん?」 お弁当を広げるための机と椅子を配置しながら、由真ちゃんが言った。
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