椿高校 1年生 10月

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「あたしね、美波ちゃんみたいになりたいのっ!」 「え?」 それは、どういう意味で? 「もっと、ね、強くなるの。 あたし、思った!こうやってウジウジってしてるから、きっとつけこまれるのよね?」 「うーんとね、ちょっと待って」 あたしは頭のなかをとりあえず整理してみる。 「昨日の件は、詳しいことは知らないけど…………」 さっき、先輩からすべて聞いたけれど、そう言ってしまうと先輩の立場が悪くなると思い、言い方を変える。 「昨日、ちょっとだけ聞こえた会話の感じだと…………悪いのは由真ちゃんじゃなくて、先輩だと思うけど」 前半の、ちょっとだけ聞こえた会話、も嘘だ。正直、ちっとも聞こえてない。 だけど、後半の悪いのは先輩だと思うのは本音だ。 あたしはさておき、西原先輩と長瀬先輩のふたりは、良くも悪くもとても目立つ。 例えるなら、雑草だらけの野原に、菜の花が2本、でかでかと咲いているようなものだ。 そのふたりと一緒にいれば、嫌でも『あんなこと』は起こるだろう。この先も、だ。
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