プロローグ 椿高校1年生6月

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「で、帰っていいですか?」 さっきの返事ももらえないのに、ここにいる必要もないので、そう答える。 カバンは手元にある。 スクールバスの時間までまだしばらくあるけど、そんなの、図書室にでもいけば時間はつぶれるものだ。 「ちょ、待って! ………なあ、一応俺、告白したんだけど!」 「へぇー」 本当に帰ろうと背を向けたあたしに、先輩が待ったをかける。 何度も断ったというのに、本当になんだってこんなめんどくさい…………。 あたしは先輩の方へと振り返り、はぁ、とため息をついた。 しかし。 眦を下げてとても悲しそうな表情を見せる先輩に、どうしてか情がわいてしまった。 このときのよくわからない情をあたしは今後、いやというほど後悔させられることになる。 そんなことも知らず、しばし、考える。 そしてピンと来た! 「仕方ないなぁ。 今度の期末テスト、数学で100点とったら付き合ってあげますよ!」
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