プロローグ 椿高校1年生6月

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「100点だよ!数学の」 「え?」 ヒラヒラと先輩が紙を振る。 あたしはそれを受け取って眺める。 ゴクリ、と自分の唾を飲み込んだ音が聞こえた。 右上の名前欄のところに、これでもかと大きく並ぶ、100の数字。 確かに数学、100点だった。 「約束、守るよな?」 そこでハタッと我に返った。 約束を思い出したのだ。 「嘘でしょ…………」 思わず漏れた言葉に、先輩が顔をしかめる。 まさか、約束破る気じゃないよな?という無言の圧力。 教室ではクラスメイトが成り行きを見守って…………るわけではなく、王子さまこと、長瀬先輩に黄色い声が上がる。 あのー、みなさん、もしもし。 見世物じゃないんだけど。 「さすがだわ、長瀬先輩! 憧れの的ー!!!」 「やっぱりあの噂、嘘じゃなかったんだね!」 「うんうん。 県の一斉模試、2位だったってうわさだよねぇ~」 なんだって!?
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