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「なんで機嫌損ねてんだ?」
「誰と誰が、こ……」
「こ?」
「こ………こ……」
「コケコッコー?」
「違う!!恋人じゃないもん!私の平穏な日常を返して!」
「だから、それについては、謝ってるじゃん。ごめんねって。」
もう慣れちゃった、デコちゅー。っていうか、演技だとしてもママにキスしてるところを見られた。送ってもらった車の中。肩抱かれて、流されてしまった。
要は、さっきから垂流されてる永倉さんのフェロモンに当てられて、唇同士でキスしちゃった訳で………もう、言ってて不甲斐ない。
今だってそうだ。玄関まで私の荷物を運んでくれた永倉さんを部屋に引っ張りこんだのは、私で。3度目のキスをされて酔っちゃってるのも私。
「……美香にハマってる。フリなんかで終われないよ。」
「永倉さん……」
「マジになっていい?本気で愛しちゃってもいい?」
「…ヤダ……他の女にも…他の人にも言うの?…私だけにはならないでしょ?」
「美香だけにだよ。」
「ウソ……」
「困ったな……俺、もう美香を我慢する自信ないよ。3年も片思いのまま、今はこんなに近い。でも、信じてくれない。切ないよ。」
「え?」
「好きだよ、美香。大好きだ。」
ちょっ!マジ?待って。男の人に抱きしめられて告白されて、よくある話だけど。
永倉さん、泣いてる?鬼上司だよね。人使いの荒さにかけて、群を抜いますよね?いつも私ら一般事務職を泣かせまくりですよね?突発的に残業させたりしますよね?
それなのに、今は私泣かしちゃったの?いやいや、そんな訳無いし。
「どうして泣くの?」
「美香に……届かない。」
「キスとか、今はスキンシップしないで。ちゃんと目を見て言って。」
「美香?」
「帰らないでって永倉さんを引き止めたのは、私よ?ちゃんと話をしたかったから。でもその先は、永倉さんが言って。ちゃんと私に伝えて。」
待て待て、私(泣)絆されてる。情に流されてるから!
「美香、俺の美香になって。俺の嫁さんになって。」
永倉さーん、着地点かなりズレましたよ。恋人飛び越えて、いきなり嫁さんな訳?
「返事ない?」
「よ?嫁さんって、言ったのは?聞き間違い?」
「嫁さん。好き過ぎるから、嫁さん。」
「なるほど……」
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