1章~念者・九門安寿(くもんあんじゅ)

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「うちもパパが転勤族だから、アンジュの気持ち分かるよ。…でも、アンジュは特別な友達だから忘れなかったよ。」 うまく誤魔化したつもりだったのに、何だろう?この子、何か引っ掛かる…。 気になり出すとおさまらない性分の私は、その夜、ダンボール箱の中を引っ掻き回し、過去の色紙やアルバムなどを探った。 "春野真由里" その名前を見つけた頃、日付はとっくに変わっていた。 確かにジャージ姿で二人並んで写真に写っている。 中学生の頃のものだ。 マユリは今とは違い、元気なショートカット。 これでは思い出せないのも無理はない。 私はいつも通りの作り笑顔だ。 マユリは友達と言ってくれたが、私の方ではそうは思っていなかったようだ。
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