1章~念者・九門安寿(くもんあんじゅ)

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「アンジュ、おはよ!一緒に学校へ行こうよ!」 目を離さないもなにも。 彼女の方から、私に近づいてきた。 「昨日、アンジュのママが挨拶に回ってたから。同じマンションだったなんて、偶然だよね!」 偶然…か。 それほど大きな街の事じゃない。 引っ越しを繰り返す家族は大抵マンション住まいだ。 うちとマユリの家族が、同じマンションに住んでいる可能性は、高いというわけだ。 そう、これは偶然…。 「でね、うちのママが遊びにいらっしゃいって!アンジュ、昔から勉強出来るもんね。一緒に宿題やろうよ!」 え…と、よく聞いてなかった…。 「うん、そのうち…。」 「アンジュ、ぼうっとしてると車に跳ねられちゃうよ!?」 マユリが屈託なく笑う。 車に…何だろう?…また頭痛が…。 「あーあ、羨ましいなあ。見てよ、前のカップル。私も彼氏ほしー。」 コロコロ話の変わる子だ。 私は苦笑いしながら、通学路を急いだ。
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