「やがて開く華」の蕾

2/29
41人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 あたしは、自分の名前が好きではなかった。  紅花と蒼葉。  赤と青。  なんて単純な名前。  どうしてこんな名付け方をしたのだろう。  見分けのつかないまだ無個性だったあたしたちを区別するために、色で分けたみたい。  まして、あたしの方が“花”だなんて……。  蒼葉は高校生になって、急に男の子達からモテはじめた。  最初に彼氏ができたのはあたしの方が早かったのに……。  可愛い名前だねって言われる度に嫌だった。  そんな名前のあたしはがさつでちっとも可愛くない。  可愛い花が似合いそうなのはあたしじゃなくて、蒼葉の方だ。  あたしの花は、まだ咲かない――
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!