「やがて開く華」の蕾

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 今となってはそれが中学生のお小遣いで買える程度の安物だって分かる。  デザインだって子供っぽ過ぎて、付けて歩く事も出来ない。  それでもやっぱり、このネックレスはあたしにとって特別なものに違いなかった。  先輩はネックレスを慈しむかのようにそっと握った。 「どうしよう、俺、何て言ったらいいか分からない」 「……先輩。少しだけ、あたしの話を聞いてくれますか?」  先輩はつぶらな瞳のテディベアから目を離し、あたしの顔をじっと見つめた。  覚悟を決めたつもりだったけど、先輩の顔を見ていると段々と緊張してきた。  握りしめたこぶしの中で少し汗がにじんだ。 「あたし……」
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